小児皮膚科について
お子様の肌はデリケート
お子様の肌は、まだ発達途中にあるため、大人に比べてとてもデリケートです。それに免疫機能も不完全なので、皮膚の健康を保つには特別な配慮を要します。
また、お子様に特有の皮膚症状が少なくありませんし、個体差も大きいので、しっかりと診察した上で、一人一人に合った適切な診療を行う必要があります。
気づいたら早めにご相談を
小さなお子様は、自分の症状をうまく言葉で伝えられないことが少なくありません。
そのため、気づいた時には、ひどい状態になっているケースもしばしばです。
保護者をはじめとする近くの大人が、お子様の皮膚変化に気づきましたら、早めに相談にいらしてください。
小児皮膚科で診察する主な疾患
かゆい疾患
うつる疾患
乳児湿疹
乳児期に、皮脂腺の多い頭や額、こすれる部分を中心に黄色いフケが出たり、カサカサした紅斑ができたりする病気です。
赤ちゃんでは生後1ヶ月頃から皮脂の分泌が亢進しますが、この頃から乳児湿疹は発症し始め、頬、額、耳の周辺などに赤いブツブツができてきます。しかし、6ヶ月頃からは次第に消えていくことが多いです。
診断にあたっては、症状から判断しますが、乳児アトピー性皮膚炎との区別が困難なケースがあるため、症状に気づいたら皮膚科を受診しましょう。
入浴時には強くこすらないように気をつけながらよく洗い、皮脂の付着を減らします。保湿剤を中心にスキンケアをしますが、炎症が強い時にはステロイド外用薬を使用します。
乳児脂漏性湿疹
生後2~3ヶ月ぐらいまでの乳児は、ホルモンの影響もあって皮脂が過剰に分泌される傾向にあります。
この皮脂が過剰に分泌されることによって起こる皮膚トラブルが、脂漏性湿疹です。おでこや頭部、耳の周辺、股部、わきの下など、皮脂線の多い場所にできやすく、湿疹はカサカサしたものから、ジクジクしたもの、分厚いクリーム色のかさぶたが付着するものまで様々です。
乳児期によく見られる一過性の変化なので、正しいケアをすれば、それだけで改善することもあります。しかし、ひどくなって膿んできたら、治療が必要になります。
皮膚の常在菌であるマラセチアに対するアレルギー反応が悪化因子として疑われる場合は抗真菌薬の外用を行い、炎症が強い場合は短期的にステロイド外用薬を併用します。
なお、乳児期の慢性的な湿疹は、アレルギーになる一因であることが知られているので、アレルギーを予防するためにも早めに皮膚科を受診し、適切な治療と正しいケアの指導をお受けになるよう、お勧めいたします。
おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)
尿や便に含まれるアンモニアや酵素などに皮膚が刺激され、おむつの当たるところに赤いブツブツやただれが生じます(皮膚のしわの間にできている場合には、カンジダ皮膚炎の可能性もあります)。
おむつかぶれの際は洗面器にぬるま湯を張っておしりをよく洗い、亜鉛華軟膏やワセリンを塗ります。症状がひどい時は、弱いステロイド軟膏を外用することもあります。
カンジダ皮膚炎
カンジダというカビの一種によって起こる皮膚炎です。この菌は健康な人の皮膚にも存在し(常在菌)、通常は炎症などを起こしたりはしません。しかし、皮膚の抵抗力が弱い赤ちゃんの温かくて湿ったおむつの中や、背中、わきなどでは炎症を起こすことがあります。症状はおむつ皮膚炎によく似ていて、股やおしりなど皮膚の擦れやすいところが赤くただれてきます。カンジダ皮膚炎におむつ皮膚炎で使用するステロイド軟膏を使用すると悪化するため自己判断せずに皮膚科を受診しましょう。
小児アトピー性皮膚炎
小児のアトピー性皮膚炎は、年齢によって皮脂の分泌量が異なるため、症状も異なってきます。生後2~3ヶ月から1歳頃までのアトピー性皮膚炎では、顔や頭、耳にジクジクとした湿疹が出てきます。肘や足首などの関節部分に湿疹が生じたり、「耳切れ」と言って耳のつけ根がただれて切れてしまったりすることがあります。
2~10歳頃は手足の関節の内側や首、わきの下などにカサカサと乾燥した湿疹が出ます。また、季節の影響としては、夏場は汗や虫刺されによる刺激でジクジクしやすくなります。冬場は空気の乾燥によってかさつきや痒みが強くなります。
アトピーの原因は人によって様々ですが、特に多いのがダニやハウスダストです。
治療は保湿剤を中心にスキンケアをしつつ、症状に応じてステロイド外用薬や免疫抑制外用薬を使用します。
アトピー性皮膚炎の治療にあたり、ステロイドの塗り薬に抵抗感をお持ちの保護者の方が少なくありませんが、症状に応じて必要な量を必要な期間だけ使い、症状が軽くなったら薬を減らしたり、弱いものに変えたりするように適切に用いれば、何ら心配はいりません。最も良くないのは自己判断で治療を中断したり外用方法を独自のものに変えてしまうことです。
治療によりお肌の状態が良くなった後は、保湿剤でスキンケアを続けることが大切になります。
汗疹(あせも)
あせもとは、汗をたくさんかいた後に、皮膚に細かい水ぶくれやブツブツが現れる皮膚疾患のことです。
汗をかきやすい夏場に多く、小児に発症しやすい疾患ですが、高熱を出している方や高温の環境下で作業している成人にも見られます。
あせもには、赤い丘疹が生じて痒みや軽い痛みを伴うタイプ、小さな白っぽい水ぶくれができるタイプなどがあります。
涼しくしてあげるだけでも治ることもありますが、かゆみを伴う場合はステロイド外用薬を用います。再発を繰り返さないためには、通気性の良い服を着用し、汗が出たらシャワーで流すか、こまめに拭き取るように心がけることが大切です。
虫刺され
虫刺されでは、虫に刺された直後から翌日以降に、その部分が赤く腫れたり、水ぶくれになったり、しこりになったりします。特に小さいお子さんは、腫れやすいものです。
痒いからといって患部を掻き壊すと、とびひ(伝染性膿痂疹)や治りにくい痒疹(痒みのある硬くなった皮膚)となり、長期化することがありますので、きれいに治すためにも皮膚科への受診をお勧めいたします。
皮膚科の治療では、ステロイド軟膏を短期間外用します。腫れや痒みが強い場合は、抗アレルギー薬を服用します。
手足のいぼ(尋常性疣贅)
ヒトパピローマウイルスの感染によって発症するドーム状に盛り上がった小型のできもので、しばしば黒い点状のプツプツを認めます。いじるとどんどん増える傾向があります。手や足の裏によくでき、人から人にうつります。治療は液体窒素療法とヨクイニン(漢方薬)の飲み薬です。多くの場合1回で治し切ることは難しく何回か治療を繰り返します。
とびひ(伝染性膿痂疹)
とびひは、皮膚への細菌感染(主に黄色ブドウ球菌と溶連菌)によって発症し、人から人へとうつる疾患です。特にアトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚のバリア機能が低下しているため、とびひにかかりやすいので注意が必要です。
掻きむしった手を介して、皮疹が全身へと広がる様子が、火事の火の粉が飛び火する様に似ているため、「とびひ」と呼ばれます。
とびひの治療には、主に抗生剤(内服・外用)を使用して原因菌を退治します。
最近ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によるとびひが多くなり、市中感染型MRSAと言われ、抗生剤が効きにくくなっています。治りにくい場合は細菌培養をして原因菌の同定と抗生剤の感受性検査を行ないます。
お子様の学校・保育園への出席に関して
病変部のみならず滲出液・痂皮などの接触によって感染・拡大するため、病変部に触らないこと、治療がしっかりなされ病変部を覆ってあげれば出席させてかまいません。ただ、発熱など全身症状を伴っている場合は出席停止としています。ただ、プールに関しては接触感染ですので病変部が乾燥し痂皮するまでは控えたほうがよいです。
みずいぼ(伝染性軟属腫)
みずいぼは、伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症です。
幼少児によく見られ、痒みを伴うことがよくあります。
特に乾燥肌やアトピー性皮膚炎のある子どもに多く見られます。その理由としては、乾燥肌やアトピー性皮膚炎があると、皮膚の「バリア機能」が低下するため、細かな傷からウイルスが入り込みやすいことと、痒みで引っ掻くことにより、爪先からうつってしまうことなどが考えられます。
プールでよく感染しますが、水から感染するというよりも、直接触れ合うことやビート板の共有が感染の原因となります。
成長とともに水いぼは自然に消退することが多いので、年齢や症状をみて治療法を決めていきます。
アタマジラミ
アタマジラミという虫が頭髪に棲みつくことで発症する疾患です。小学校低学年までの子どもや園児に多く、保育園での枕の共有や頭をすりつけあって遊んだりして感染していきます。不潔にしているから生じるわけではありません。症状としては、頭の痒み、痒みのために頭を掻いて湿疹になったりします。髪の毛に簡単に取れないフケのようなものがあればシラミの卵の可能性がありますので皮膚科を受診させてください。
治療は、シラミ駆除薬であるスミスリンシャンプー(フェノトリン)を使用します。シャンプーを3日に1度、10日間程度使用することで、シラミを駆除できます。虫卵に対しては効果が無いので、成虫の駆除が済んでも、卵が孵化する1週間~10日程度は使用を続けてください。
手足口病
手足や口の中などに発疹(赤いプツプツや小さな水疱)が生じる感染症で、コクサッキーウィルスやエンテロウィルスなどによって起こります。感染経路としては飛沫感染、接触感染、糞口感染(便の中に排泄されたウィルスが口に入って感染する)などであり、集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは集団感染が起こりやすいため注意が必要です。症状としては、感染してから3~5日後に口の中、手のひら、足の裏や足背などに赤いプツプツや小さな水疱が現れます。口の中に水疱ができると痛みを伴い、食事が食べにくくなることがあります。発熱することもありますが、ほとんどはあまり高くなりません。
手足口病の治療
特効薬は無く、特別な治療法はありません。経過を見ながら、症状に応じた治療を行います。多くは数日のうちに治りますが、稀に髄膜炎や脳炎など、中枢神経系の合併症などが起こる場合があります。2日以上続く高熱、嘔吐・頭痛、視線が合わない、呼び掛けに応えない、呼吸が速くて息苦しそう、水分が取れずにおしっこが出ない、ぐったりとしている、などの重い症状が見られた場合は、すぐに大きな医療機関を受診しましょう。皮膚の症状が改善しても便などから長期間ウィルスを排泄するため、感染源になる可能性があります。治癒後もトイレの後の手洗いなどに注意して過ごしてください。