アレルギー科について
アレルギーとは
私たちの体には、ウイルスや細菌などの異物が入ってきた時に、これら外敵を攻撃しようとする免疫機能が備わっています。ところが、この免疫が、食べ物や花粉など私たちの体に害を与えないものまでを有害物質と認識して過剰に反応し、攻撃し過ぎる結果、逆にマイナスの症状を引き起こしてしまうのがアレルギーです。本来なら体を守るはずの免疫反応が、自分自身を傷つけてしまうアレルギー反応に変わってしまうわけです。
アレルギー科で診察する主な疾患
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹がほぼ左右対称性に生じ、良くなったり悪くなったりを繰り返します。アトピー性皮膚炎の原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、遺伝的な体質に環境要因が影響して発症すると考えられています。多くの患者さんは、皮膚が乾燥しやすい素因(ドライスキン)とアトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)を併せもっています。アトピー性皮膚炎の治療において中心となるのは、薬物療法です。保湿剤で皮膚のバリア機能を整えることを基本とし、ステロイドの塗り薬と免疫抑制薬の塗り薬を併用します。ステロイドの塗り薬は、炎症を強く抑える作用を有し、免疫抑制薬の塗り薬は過剰な免疫反応を抑えます。これらの薬剤を適切に使うことで症状を早く改善し、良い状態を維持することが可能になります。
ほかに、痒みを抑えるために抗アレルギー薬の内服を補助的に用いたり、他の治療でなかなか良くならない重症の患者さんでは、紫外線療法(ナローバンドUVB療法)を併用したりシクロスポリン(免疫抑制薬)を内服したりすることがあります。
薬疹
内服薬や注射薬、稀にサプリメントなどでアレルギーを起こし、皮膚や粘膜に様々な症状が現れる疾患です。以前に使用して問題がなかった薬やサプリメントでも薬疹を起こす可能性はあるので注意が必要です。
薬疹では様々な発疹が現れるので、他の皮膚疾患と区別することは難しく、患者さまの薬剤内服歴の聴取がかなり重要になってきます。また、重症化すると死に至るケースもあり、軽視は禁物です。特に重症化しやすいのは口の中や目の中、外陰部などの粘膜に発疹が現れるケースです。
治療としては、まず原因となっている薬剤の使用を中止して、ステロイド軟膏の外用や抗アレルギー薬の内服を開始します。
重症の場合はステロイドの内服・注射による治療を行ないます。入院加療が必要になる場合もあります。薬疹が疑われたら、必ず医師に相談し、治療と再発防止に努めましょう。受診の際は必ずお薬手帳をご持参下さい。
花粉症
花粉症とはアレルギー性鼻炎の一種で、植物の花粉が原因となって、目の痒み・異物感・充血、涙、立て続けのくしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどの症状を引き起こします。
原因物質としては、スギやヒノキの花粉がよく知られていますが、これら以外にもアレルギーを引き起こす植物には、シラカンバ、ハンノキ、カモガヤ、イネ、ブタクサ、ヨモギほか、たくさんの種類があります。
治療は、抗原回避(アレルゲンを近づけない環境整備)と薬物療法を中心に進めます。薬物療法には、主に下記のような方法があります。
①抗アレルギー薬の内服
花粉の飛散が始まる2週間前(症状の出る前)から飲み始めます。症状が出てから薬を飲み始めるのに比べ、症状が軽く済むことが多いというデータがあります。特に鼻みず、くしゃみが強いタイプの人には効果的です。
②鼻スプレー
花粉症治療の効果が強く、副作用が少ないため、鼻づまりが強い人には、内服薬に加えて局所スプレーを併用します。
③減感作療法
花粉症の原因がスギであれば治療適応となります。減感作療法とはスギなどのアレルゲンを少量から投与、徐々に増量し体をアレルゲンに慣らして長期にわたりアレルギー症状を抑えたり、和らげたりする治療法です。 下記のような特徴があります。
- シダキュアという薬剤を舌の下に繰り返し投与することで治療します(舌下免疫療法)。
- 治療前に症状の原因がスギ花粉によるものか確定診断のため血液検査を行ないます。
- アナフィラキシー(特に口腔内のアレルギー症状)などのアレルギー反応による副作用の可能性があり、重篤な副作用が出る可能性があります。
- 初回投与時は医師の監督のもと、投与後少なくとも30分間は経過観察のため院内にいて頂きます。
- 治療開始は6月から12月までです。(1月から5月までの花粉飛散期は開始することができません)。
- 治療は長期間(3~5年)かかります。
- すべての患者さんに効果が期待できるわけではありません。